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審査員
和田喜夫 日本演出者協会理事,事務局長
陰湿集団『かぐや姫競売会のご案内』 とても貧しいかぐや姫と付き人という印象で、ひさびさに他者性を感じる作品でした。 月に帰るためのお金が無くて競売というのは理屈として良く分からないですが、観客参 加の方法などが面白いと思いました。かぐや姫が575の歌しか口にしないのも不思議 に面白く、ディスコミュニケーションなのにコミュニケーションを感じる点も面白かっ たですね。一番のユニークな点は、貧しいという社会性をさりげなく基本に置いたこと かなという気がします。負の身体性も感じました。寺山修司のような形式の解体と新た な出会いに関心を持たれているのかなと思いました。
後藤香 劇団goto
陰湿集団『かぐや姫競売会のご案内』 囲み舞台を大いに利用した芝居で、「えぇ!?」と困惑する演出の連続でしたが、嫌な気持 ちにならず、最後まで楽しめました。今まで観劇した囲み舞台の中で最も、囲み舞台であ る必要性を感じられた作品でした。演技と素の境目が分からない表現や、ほぼ照明がない 中、微かな明かりの先を見たいと思わせられた事、大抵観客が緊張してひいてしまう客い じりのような演出にも参加したいと思わせられる空気を作られていた事など、敬服しまし た。
観劇レポーター
神保茂
演劇であることを解体し、裏切っていきながら、それでもぎりぎりで演劇として成立している作品。 登場人物と役者、役者と観客が連続しつつ入れ替わり、劇とそうでないものの境目を絶妙に泳ぎき る。二人の登場人物の間では、会話が成立しておらず、一方が読み上げる俳句をもう一方がフォロー する形で劇に回収していく。とても知的な作品で、劇中で役者として口する、「幕間劇」としては素 晴らいしいのですが、単体での面白さとなると評価が難しいです。
お会計
かぐや姫とその付き人である役者 2 人の独特な雰囲気が衝撃でした。2 人が月へ戻るための帰り賃を 稼ぐため競売するのですが、”円”ではなく照度の単位である”ルクス”で競売を行なっていた点が 私は気になりました。遠い未来に月では光があまり届かず貴重な存在となっていて、月では価値のあ るものになっているのかなと思いました。また観客も強制的に競売に参加させられ、他の団体には見 られないような退屈しない工夫がされていました。
田村さえ
準備の時間からこの作品ははじまっている。開演直前の付き人の様子が、もっとも「演技をしてい る」時間のようにも見えました。がらくた宝物殿と同じく月を目指しているはずなのに、全く違う状 態で面白かったです。順番が違ったら印象が変わっていたかも。ネタとしての振り切りというか、作 り手の割り切り感が強く見えるが、お客さんとのコミュニケーションがとても丁寧にとれていて、あ る意味では実験がいっぱい詰まっている面白い作品だと思います。
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